透明な瓶に手紙をつめてインターネットの海へ

きれぎれの落書きと私信 by 雪虫の伝説

タグ:林芙美子

花の命は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の人生は・・壮絶なものでしたが

彼女の作品は好きです。
彼女の文体は素敵です。
彼女の書きようは明るくていいです。

 

花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かりき


遠い昔のテレビコマーシャルを思い出しました。

 

花のいのちは、けっこう長い・・・そんなコピーだったと思います。

気に入っています。


 

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さくらじま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

林芙美子は書いています。
放浪記です。


折れた鉛筆のように、女達は皆ゴロゴロ眠っている。
雑記帳のはじにこんな手紙をかいてみる。
生きのびるまで生きて来たという気持ちです。
随分長い事会いませんね、神田でお別れしたきりですもの。



林芙美子はずばらしいです。
どのページにも詩情があふれています。
どのページにも何かエレルギーが隠されています。
悲しくて辛くてどうしようもないはずなのに
暗さは少しもありません。
爽やかさすら感じます。

 

夏の終わり
暑さの疲れが体の中にたまっているような・・・・
何をしたわけでもないのにです。

暑さに負けているのです。


私は
秋に京都駅のホームで・・・

それっきりです。

 


 

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桜島

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

林芙美子は鹿児島が誇る作家です。
けれども彼女にとってはこの町は決して好ましいところではありませんでした。

古里を持たないと語った彼女の
持てない故郷のひとつだったのです。


けれども悲惨な生活の中で書かれた彼女の文章は
こころよく弾んでいます。

読み始めたら止まらなくなります。

まちがいなく彼女もまた天才なのだと思います。


林芙美子もまた私を睡眠不足にさせてくれます。

 

 

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 私は北九州の或る小学校で、こんな歌を習った事があった。

  更けゆく秋の夜 旅の空の
  侘しき思いに 一人なやむ
  恋しや古里 なつかし父母

 私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊予の人間で・・・・

・・・・・それ故、宿命的に旅人である私は、この恋しや古里の歌を、随分侘しい気持ちで習ったものであった。



林芙美子の文章です。
放浪記です。


故郷が人に及ぼす影響はいい意味でも悪い意味でも大きなモノです。
人がみな故郷を愛するとは限りません。

林芙美子の文章のどこをめくっても
鹿児島を愛した形跡をみつけることはできません。
むしろ彼女は桜島を鹿児島を憎んでいたのだと思えるのです。
ある意味憎しみとも言えそうなその感情が
彼女が作家であることのできた要因のひとつだったのだと思えるほどです。

だからこそ
昨日の彼女の詩をみつけた私は
少しうれしかったのです。


彼女は好んで色紙に次の言葉を書いていたといいます。

花のいのちは みじかくて
苦しきことのみ 多かりき


そしてこの句は彼女の文学碑にも刻まれています。

鹿児島桜島の古里温泉に彼女の碑がたったのは
彼女の死のわずか10ヶ月ほどあとのことです。

彼女が47歳で亡くなったのは
昭和26年6月28日のことです。
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桜島11/10
林芙美子は鹿児島を故郷とは認めませんでした。
桜島は彼女にとって辛い場所だったのです。



けれども私は先日
林芙美子の詩をみつけました。「帰郷」という詩です。

古里の山や海を眺めて泣く私です
久々で訪れた古里の家
昔々 子どもの飯事(ままごと)に
私のオムコサンになった子どもは
小さな村いっぱいにツチの音をたてて
大きな風呂桶にタガを入れている
もう大木のような若者だ
崩れた土橋の上で
小指をつないだ かのひとは

・・・・


この詩をみつけて少しうれしくなりました。
彼女にも幸せな思い出があったのです。

それはとっても小さなものかも知れませんが
ぽっと明るい少女時代のものだったはずです。


桜島は今日も白い煙をはいていました。


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